

バウムクーヘンの源流がここに。
60年前に出会った感動の味
高度経済成長に沸く1960年代、東京日本橋に洋菓子の名店「トロイカ」がありました。縁あって1962年から修行していたわたし塩見は、ここで出会ったバウムクーヘンに大変驚き、感動しました。フラワーバッター方式で生地を作り、直火オーブンで1本焼きするバウムクーヘンです。「トロイカ」で習得した伝統の製法を、今に継承しているのが1965年、京都・福知山市に創業した「チロリア」です。
ここに、チロリア店主の塩見が肌で感じたきたバウムクーヘンの歴史を振り返ってみます。1960年代は東京でもバウムクーヘンを作る洋菓子店は10数店しかなく、それは大変な人気でした。バウムクーヘンは専用のオーブンが必要なので、1970年頃から機械メーカーが大型オーブンを開発し、一緒にノウハウ・レシピも考案して全国展開していきました。これが「オールインミクス方式」と呼ばれるものです。当時はノウハウと一緒にオーブンを購入すればバウムクーヘンが作れるというので広く普及したようです。軽いフワフワの食感は完成から2日目からはパサパサします。それを解消すべくなんとか、のどごしよく仕上げるため、多くのお店では、独自に研究を重ね副材料・添加物を加えていったようです。
オールインミクス方式は、生地をミキサーで高速回転させ作るため、粉からグルテンが出てしまいます。しかし連続して焼く遠赤外線の大型オーブンを使う場合は、これがベスト。粉のグルテンはゴムのような張力があり、繊維がヘチマのように柔らかく絡み合った状態です。これが400〜500度の高温に晒されるとさらに強く絡み合います。徐々に冷めてくると、のどごしが悪くなりパサつく道理です。パンであればこのグルテンが主役で良いのですが、お菓子類のグルテンは脇役でいいのです。
私たちの受け継いだフラワーバッター方式は、粉類は手で撹拌するためにグルテンは出にくい。しかし直火のオーブンで焼くため生地は少々固いため、生地の整形作業も必要です。
たとえば、同じ生地量でもオールインミクス方式では私たちフラワーバッター方式の2倍のバウムクーヘンが完成します。高速回転のミキサーで混ぜると空気を多く含み量が増えるからです。口当たり軽くフワッとした仕上がりですが、その分のどごしが悪くなると思います。同じ生地量で、オールインミクス方式の半分しか完成しない私たちフラワーバッター方式は、どっしりと重いわけです。


直火の「炎」は、
焼くときだけあればいい
次に、多くの赤外線ヒーターによる『熱』で焼くオーブンは、窯の中が高温のため、生地表面が必要以上に浮き、また赤外線ヒーターの特性で一度焼いたバウムクーヘンの奥深くまで『熱』を通します。火を通すと言いますが、これが焼き始めから焼き終わるまで続くと、乾燥し過ぎてしっとり感が出ない理由かと思います。
私たちは「高温の熱」でなく、直火の炎を使います。そしてその炎も焼く時だけあればいい。生地を浮かす・焼くを同時に行い生地表面を必要以上に乾燥させないためには、芯棒が釜を出入りする時や、生地をかける時には炎は不要です。オーブンに組み込んだガス供給装置にて生地をかけた芯棒が上に上がればガス火の炎が大きくなり、うまくバウムクーヘンが焼ける仕組みです。(特許取得済みオーブン)
必要な時だけ炎を使う私たちの方法だと余分な空気を含まず、過度に乾燥しないのでしっとり食感が長持ちして、ドリンク類、添え物のクリームなどがなくてものどごしのよい1本に仕上がります。これこそが、本物のバウムクーヘンであるとわたしは確信しています。
(この記事は、わたし塩見豊の独自の見解を含みます)
